大判例

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横浜地方裁判所 平成4年(ワ)3160号 判決

原告

木村淑子

木村雅樹

阿部辰美

阿部やへ子

阿部ひさ子

阿部千鶴子

阿部洋一

阿部紀彦

阿部友紀

日野のぶ子

日野博貴

右法定代理人親権者母

日野のぶ子

原告

阿部久子

阿部洋子

阿部竜一

阿部保子

阿部亨

阿部浩幸

右両名法定代理人親権者母

阿部保子

原告

八木ケンコ

八木玲子

八木順子

八木郁子

津田洋子

津田弘子

津田利哉

津田武彦

阿部まり子

阿部和恵

阿部和幸

右法定代理人親権者母

阿部まり子

原告

石森節子

石森慎一

石森真紀

須藤善明

須藤邦子

阿部誠一

阿部八重子

阿部ひで子

阿部公悦

阿部文香

右両名法定代理人親権者母

阿部ひで子

原告

阿部光子

津田みゆき

織笠育子

織笠友美

織笠育美

織笠猛

右両名法定代理人親権者母

織笠育子

右原告ら訴訟代理人弁護士

今泉善彌

右訴訟復代理人弁護士

堀木縣治

被告

小名浜漁業協同組合

右代表者組合長理事

小野定次

右訴訟代理人弁護士

原田一英

右訴訟復代理人弁護士

堀井敬一

右訴訟代理人弁護士

内田実

椙山敬士

大谷好信

主文

一  被告は、原告阿部ひさ子、同阿部千鶴子、同日野のぶ子、同阿部保子、同阿部まり子、同須藤善明、同須藤邦子、同阿部誠一、同阿部八重子、同阿部光子、同織笠育子に対し、別表三の②欄記載の各原告に対応する⑬欄記載の金員及びこれに対する平成四年一一月五日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告阿部ひさ子、同阿部千鶴子、同日野のぶ子、同阿部保子、同阿部まり子、同須藤善明、同須藤邦子、同阿部誠一、同阿部八重子、同阿部光子、同織笠育子のその余の請求及びその余の原告らの請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、第一項記載の原告らと被告との間に生じたものは、これを被告の負担とし、その余の原告らと被告との間に生じたものは、これを同原告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

被告は、別紙請求目録①欄記載の各原告に対し、同目録②欄記載の金員及びうち同目録③欄記載の金員については平成四年七月七日から、うち同目録④欄記載の金員については、平成七年五月二五日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、冬季のベーリング海で、底引網漁業に従事中に、船舶衝突事故のため死亡した者の遺族である原告らが、同事故で多数の死亡者が生じたのは、船主の船員に対する船員災害防止に係わる安全指導が十分に行われていなかったこと等が原因であるとして、安全配慮義務違反及び不法行為による損害賠償金並びにこれらに対する遅延損害金の支払を船主である被告に求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  事故の発生

昭和五九年二月一五日午前四時(日本時間。以下同じ。)ころ、北緯五四度三分、西経一七四度三四分付近のベーリング海上において、安洋水産株式会社所有の漁船第一五安洋丸(「安洋丸」という。)と被告所有の漁船第一一協和丸(「協和丸」という。)が衝突し(「本件衝突」という。)、協和丸は同日午前四時四五分ころ沈没し、その乗組員二四名中一四名が死亡、二名が行方不明となり認定死亡となった(「本件事故」という。)。

(一) 本件事故海域の気象

冬季のべーリング海域では、恒常的な低圧部が形成され、風向及び風力ともに大きく変化し、あらゆる方向からの風が見られ、強風の発生頻度が高い。天候の主な特徴は、晴、曇、雨及び雪などと急激な変化があって、快晴の続くことはほとんどなく、雲量が大きく、冬季の霧の発生は見られないが、雨や雪により視程が狭められることがしばしばある。

(二) 協和丸の構造

本船は、一そうびき船尾式トロール船で、操舵室、長船首楼甲板、船楼甲板、上甲板、魚倉及び機関室等から成っており、操舵室は船首から約一四メートル後方の長船首楼甲板上に設けられ、同室天井甲板上にレーダーマストのほか各種アンテナ及び両舷にそれぞれ膨張式救命筏一個が設備されていた。

上甲板下は、前から船首タンク、第一魚倉、第二魚倉、第三魚倉、機関室、ディープタンク及び船尾タンクの順に区画され、本件事故の衝突部位である第三魚倉は、フレーム番号三二から四九までの長さ約九メートルの区画で、船首より後方約二六メートル及び約三五メートルに隔壁が設けてあり、同魚倉上の上甲板右舷側で、船首より約三〇メートル後方の船側外板に、漁獲物を処理した際の廃棄物を排出するダスターシュートが設けられていた。

(三) 本件事故

(1) 衝突に至る経過

ア 安洋丸は、木村重夫漁ろう長、大山義則船長ほか乗組員二三名を乗せて、昭和五八年一一月二〇日、宮城県石巻港を出航し、協和丸は、八木稔船長(「八木船長」という。)、阿部榮文漁ろう長(「阿部漁ろう長」という。)ほか乗組員二二名を乗せ、同年一二月二五日、宮城県石巻港を出航して、いずれもベーリング海域へ出航した。当時、同海域では、衝突防止、安全操業のために、集団で操業する方式が採用され、同じ基地の僚船がグループを組み、行動をともにしていた。両船は石巻グループに属し、数隻の僚船とともに無線電話で連絡をとりながら協力して操業していた。

イ 本件事故現場付近の海上は、昭和五九年二月一五日午前二時ころから、断続的な吹雪を伴う荒天となり、本件事故当時、天候は雪で、北西の風風力九、海上は波高五メートルばかりの波浪があり、視程は一〇〇メートルばかりに狭められ、気温摂氏零度及び水温摂氏三度であった。

ウ 協和丸の阿部漁ろう長は、同日午前三時三〇分ころ、無線電話により付近の僚船に対し、魚群の探知とその地点及び「支え」の状態に入る旨を通知した(「支え」とは、操船方法であり、船首を常に風上(波の方向)に向け、圧流されない程度にエンジンを使用し、ほとんど同一地点に停止させて横波を避け、船の横転を防止するものである。)。

このころ、八木船長は、視程が一〇〇メートルと著しく制限され、かつ、僚船が付近に存在していることを知っていたのに、なおも霧中信号の吹鳴もレーダーによる厳重な見張りも行うことなく、自動衝突予防援助装置の警報音量を最小限度にしていたため、自船が「支え」の状態に入ったころ、安洋丸が、衝突のおそれがある態勢で接近中であったのに、これに全く気付かず、また阿部漁ろう長としては、付近海域に僚船がいたのであるから、無線電話でその動静を確かめたうえ見張りに当たるなど、船長に対する運行補佐を行う必要があったのに、これを行わず、魚群探知に気を奪われたまま進行した。

エ 安洋丸の木村漁ろう長は、同日午前一時三〇分ころから、単独当直を続けていたが、協和丸から「支え」に入る旨及びその位置の連絡を受けるなどして、協和丸等の僚船が接近しているのを知りながら、レーダーでその映像を確認したり、無線電話で連絡をせず、協和丸の動向を確認しないまま、魚群探知に気を奪われ、時々レーダーを見る程度で、見張り不十分のまま五ノットという過大な速度で続航した。

オ 同日午前四時ころ、本件事故現場付近で、安洋丸の船首が、ほぼ三〇〇度に向首した協和丸の右舷側三番魚倉後部の水線下外板に、後方から約四五度の角度で衝突した。

(2) 衝突後の状況

ア 協和丸は、安洋丸が衝突した直後に、船体が右舷側に五、六度傾斜した。しかし、阿部漁ろう長は、八木船長の運行指揮を補佐して船体及び乗組員らの救助に必要な助言を行うことなく、乗組員らに対しては、乗組員居住区への非常ベルのボタンを押したのみで、機関室には何らの通報も行わず、自ら操船指揮に当たり、損傷、浸水状況を確かめることはせず、増速して右旋回を試み、右回頭を続けた。阿部漁ろう長は、同四時七分ころ、船内に浸水している旨の叫び声を聞いて傾斜が浸水によるものであることを知ったのに、速やかに機関を停止して防水処置をとることなく、八木船長に速力を約四ノットに減じさせて衝突箇所の点検を依頼し、なおも右転を続けた。

イ 乗組員らは、前記非常ベルの合図で起き出し、各人各様の行動をとった。二等航海士阿部清美、通信長石森信夫ほか数人が右舷側膨張式救命筏の投下作業にとりかかり、数人が損傷箇所を点検したが、適切な報告は行われなかった。協和丸は、三番魚倉内の浸水量が増加するとともに上甲板上の漁獲物処理場内にも浸水し、これが水密戸を開放したままの右舷側機器室前部出入口のコーミングを超えて同室内に侵入しはじめ、そのころ次席一等航海士阿部直道は、右舷側機器室前部出入口に駆けつけ右舷側ダスターシュート後方から浸水するのを認めたが、同戸を閉鎖して機関室への浸水を防止することなく、操舵室後方にいる乗組員に激しく浸水している旨を告げたにすぎず、やがて同機器室に侵入した海水が、同室内後部の戸を開放したままであった機関室出入口から同室内に侵入しはじめた。

ウ 阿部漁ろう長が、その後、右舷側の筏の投下準備が行われているのを認め、同四時一〇分ころ、同筏を投下しようと考え、八木船長に舵中央、機関停止を指示したが、既に機関室に侵入した海水が電気系統に及んで船内電源が遮断されていたため、協和丸は操縦不能の状態であった。阿部漁ろう長は、船の行脚があるままで、右筏の投下を指示したが、投下された筏は、海面上で展張したものの、右舷側と左舷側の両方ともに投下直後に流失した。トロール作業甲板から下ろしたゴム製空気フェンダーは、十分に係止していなかったため流失した。

エ 協和丸は、同四時一八分ころ、機関室に侵入した海水により主機関が停止し、右舷側に傾いたまま南西へ漂流を始め、その乗組員らは、膨張式救命胴衣を着用して左舷側で救助を待った。やがて、協和丸左舷側に接近した安洋丸から、協和丸へ投げ綱が投げられたが、協和丸の一等機関士木村富士夫(昭和九年一〇月二六日生)及び甲板員阿部辰夫(昭和三二年一二月二三日生)は、投げ綱に取り付けられた係累索を係止しようとして、これに引きずられ海中に転落、引き揚げられたものの寒冷死した。

オ その後、安洋丸が協和丸左舷側に風下から接舷を試みたが、大傾斜して船体の沈下した協和丸との風圧差、強風及び高大な波浪により阻まれ、十分に接舷できなかった。たまたま安洋丸のフェンダーが協和丸左舷側に接近した際、一等航海士阿部淳一と阿部漁ろう長はこれに飛び移り、安洋丸に移乗した。

カ 安洋丸の大山船長は、そのころ、一等航海士阿部淳一の要請で安洋丸の膨張式救命筏を投下したが、投下装置の取扱方法を熟知していなかったため、筏は落下後に海上で展張したものの、流出してしまった。

キ その後、二等航海士阿部清美、甲板員千葉留蔵、機関長阿部賢二、通信長石森信夫、甲板員釜谷恒男、次席一等航海士阿部直道は、いずれも安洋丸から投げられた細索にすがる等して救助されたが、八木稔船長(昭和二九年四月三〇日生)、二等機関士阿部久雄(昭和二五年一〇月一五日生)、甲板長阿部吉雄(昭和一四年一二月一七日生)、冷凍長日野正(昭和二一年一一月一〇日生)、司厨長阿部隆三(昭和一〇年三月二〇日生)、甲板員阿部明義(昭和二七年九月二九日生)、同八木清一(昭和一一年一一月二二日生)、同津田利郎(昭和一四年九月一五日生)、同阿部順(昭和二三年五月二五日生)、機関員石森正德(昭和一七年一月一八日生)、操縦長須藤嘉次(昭和三四年五月二七日生)、甲板員阿部幸三(昭和二一年二月一一日生)、機関員阿部政一(昭和三一年一〇月一八日生)、機関員織笠善朗(昭和二五年九月三〇日生)は、協和丸の沈没により海中に投げ出され、死亡し、または行方不明(認定死亡)となった。

2  当事者

(一) 原告らは、本件事故のため死亡又は認定死亡した協和丸の乗組員の相続人であり、その続柄は、別表三の②「原告たる相続人の氏名・続柄・法定相続分」欄記載のとおりである(甲一六号証及び弁論の全趣旨により成立の認められる同一一六ないし一三〇号証の各一、弁論の全趣旨によると、この事実が認められる。)。

(二) 被告は、協和丸の船主であり、本件事故のため死亡した乗組員らの雇用主であった。

3  和解金の受領

八木船長を含む本件事故の死亡乗組員の遺族である原告らは、安洋水産株式会社及び日本船主責任相互保険組合(「保険組合」という。)を被告として、本件事故による損害賠償を請求する訴訟を提起していたが(「安洋訴訟」という。)、平成四年三月三〇日、保険組合との間で、東京高等裁判所で和解が成立し、同組合から金二億二〇〇〇万円の支払を受け(同裁判所平成三年(ネ)第六五八号事件(原審・東京地方裁判所昭和六〇年(ワ)第一〇六七九号事件)。「保険組合との和解」という。)、平成四年七月七日、安洋水産株式会社との間で、東京高等裁判所で和解が成立し、同会社から金九億九〇〇〇万円の支払を受け(同裁判所平成三年(ネ)第六〇九号・同年(ネ)第三三七〇号事件(原審・保険組合との和解と同じ)。「安洋水産との和解」という。)、安洋訴訟において合計金一二億一〇〇〇万円の和解金の支払を受けた(以上の両和解を合わせて、「安洋訴訟の和解」という。)。

二  争点

1  安全配慮義務違反の有無

(一) 原告らの主張

(1) 本件事故が発生した冬季のベーリング海は、すけとうだらの好漁場であるため、多くの船が輻輳する一方、日本付近を通過して北東進する低気圧が、太平洋上で発達し、風向、風力とも大きく変化し、強風、発生波高いずれも大となり、雪や雨によって視程が著しく狭まるため、常に操業船間の衝突の恐れが高い漁場であり、また、同海域は、気温は常に氷点以下で海水温度も摂氏二ないし三度であるため、衝突により船が沈没し、船員が海中に落下すると瞬時に寒冷死する危険性が高い過酷な労働環境である。

したがって、船舶所有者である被告は、ベーリング海で乗組員を就労させるに当たっては、船が衝突した場合の非常配置、職務の分掌を厳重に定めておく必要があり、万一の事故に備えた非常配置措置を常に指導訓練しなければならなかった。さらに、船が沈没するような事態においては、救命筏が唯一の救命手段であり、これは、悪条件下で危機一髪の時に投下使用されるのが通常であるから、被告は、協和丸に備えた乙種膨張式救命筏(住友電気工事株式会社製のSIB型)の構造や取扱方法を乗組員に指導して周知徹底させ、また、投下実技訓練を行って、投下手順を習熟させておかなければならなかった。

しかしながら、協和丸には非常部署配置が全く定められておらず、非常事態対処の具体的方法や手段も定められておらず、非常事態の訓練など全く行われずに、被告はこれらを漁ろう長に放任していた。そのため、浸水事故発生時、誰が防水扉の責任者となり、誰がこれを補佐するのか、衝突時(緊急時)の操船は船長が行い、誰がどのように補佐するのか、損傷箇所の確認は誰が行い、誰に報告し、いかなる方法で損傷拡大を防ぐのか等の非常事態職務分掌は、被告において全く定められていなかった。また、被告は、乗組員に対し、筏の構造、投下方法などの教育資料を渡したことすらなく、筏の投下実技訓練も行ったことはなかった。

本件事故の衝突部位は、協和丸の三番魚倉であったが、漁船には前後の区画への浸水を防止するために、水密の防水扉が設けられており、他区画への浸水がなければ船は浮力を失わないものであり、本件で右区画に浸水を止めることは容易であった。しかし、協和丸には非常部署すら定められていなかったために防水扉の閉鎖を行う者すらなく、船員は右往左往するのみで、船の浸水拡大を放置してしまった。

さらに、本件事故当時の波高は五メートル程度で、膨張式救命筏の耐波能力をもってすれば、十分に耐え得るものであり、事故現場付近には、安洋丸のほか何隻もの漁船が存在していたため、筏に乗った乗組員を簡単に救出できたであろうところ、協和丸の乗組員は自船の筏の構造や投下方法を知らず、投下実技訓練も受けていなかったため、投下に先立ってもやい綱を架台に予め固縛することをせず、そのまま投下したため、筏は海面上で膨張展開したものの、折からの強風によって流失した。

以上のとおり、被告は、その所有船舶乗組員の生命及び健康を常に事故発生の公算が大きい冬季ベーリング海漁場で保護するよう配慮すべき信義則上の義務を怠っていたことは明白である。

(2) 阿部漁ろう長は、被告の安全配慮義務の履行補助者であり、①同漁ろう長及び八木船長が、本件事故当日に航海当直していた際、無線電話による連絡やレーダーの監視を怠り、安洋丸の位置を十分に確認せず、接近する安洋丸に対し注意喚起を十分に行わなかったことは、安全配慮義務違反であり、②阿部漁ろう長が、本件衝突後、八木船長を差し置いて同人に命令して舵につかせ、協和丸を六ノットに増速させ右回頭を続けて安洋丸の接舷を妨げ、また、直ちに乗組員を起こし、協和丸の損傷状態と浸水程度を確認して防水処置をせず、全乗組員を非常部署に配置して浸水を防止し、退避の準備、救命筏の点検等を迅速に行わせるべきであったのにこれらを怠ったことも、安全配慮義務違反となる。

(二) 被告の主張

(1) 船員法一四条の三で、非常配置表の設置及び救命筏の扱いを含む操練の実施は船長の職務権限とされており、被告の職務権限の範囲内にないから、右は被告の安全配慮義務の内容とすることはできず、その不履行責任を問われる理由はない。

船員法一四条の三が規定されているのは、非常配置表の設置及び救命筏の扱いを含む操練をする職務は、資格を有する船長が、当該船舶及び船員の特質等を十分に把握した上で、その職務上の裁量により決することが最も海上安全に資し、陸上の船主がこれに干渉することは許されないためであり、このことは、本件事故当時、船員法一四条の三の適用のある船舶の条件が命令に委ねられており、船員法施行規則三条の三によると、漁船の場合は総トン数五〇〇トン以上の船舶に限られ、協和丸は第二種の従業制限を有する総トン数五〇〇トン未満の漁船で船長に非常配置表の作成掲示及び訓練実施の各義務は免除されていたとしても、同様に当てはまるから、右が船長の職務権限に属することにかわりなく被告の職務権限に属しない。

(2) 仮に、被告に非常配置表の設置及び救命筏の扱いを含む操練の実施の義務があるとしても、本件事故当時の現場の海況は救命筏の使用可能限度を越えており、乗組員らの筏の取扱に誤りはないから、これを前提として船舶所有者の指導責任を論じる余地はない。

すなわち、①協和丸に装備されていた救命筏は、東洋ゴム工業株式会社製TRA―一五E型(SV)甲種膨張式救命筏(「東洋甲種」という。)で、筏が流失したのは、もやい綱を本船に取っていなかったからではなく、東洋甲種では筏の天幕が自動展張式であったから、筏投下と同時に、強風が自動展張した天幕部分に吹き込んで筏のもやい綱が切れてしまったためであって、乗組員らの筏の取扱に誤りはない。②協和丸は、筏を投下する時点で、機関が浸水で動かない状態になっており、行脚が止まるのを待つしかなかったが、既に傾斜がひどくなっており、船が沈没して乗組員が海中に投げ出されると短時間で死亡してしまうのであるから、右状況下で行脚のあるうちに筏を投下するように阿部漁ろう長が指示したことは止むを得ない処置であって、筏の取扱方法を誤ったことにはならない。

(3) 船員災害防止協会及び小名浜救難所が、本件事故発生前、小名浜地区で、膨張式救命筏の使用方法についての訓練を行っており、被告はこれに積極的に協力していた。

(4) 履行補助者による安全配慮義務違反の主張に対しては、船主の安全配慮義務は、船舶所有者として船舶安全設備の設置をすること等に限定されるのであり、船長らの具体的な操船上の義務は含まれないものである。

2  不法行為責任の有無

(一) 原告ら

(1) 被告は、阿部漁ろう長の1(一)(2)の行為につき、船舶所有者として商法六九〇条の責任を負う。

(2) 被告は、1(一)(1)の行為につき民法七〇九条の責任を負う。

(二) 被告

(1) 原告らにおいて本件事故及び加害者を知った昭和五九年二月一五日の翌日である昭和五九年二月一六日を起算日とし、昭和六二年二月一五日をもって時効が満了した。

(2) 被告は、平成五年八月一一日の本件口頭弁論期日において、右時効を援用する旨の意思表示をした。

3  原告らの損害額はいくらか。

4  安洋訴訟の和解金について

(一) 被告は、安洋訴訟の和解で、現実の支払額である一二億一〇〇〇万円を総損害とする合意が安洋訴訟の当事者間でなされており、同訴訟に補助参加していた被告は右の金額の確認という事実の効力を受けると主張する。

(二) 被告は、(一)が認められないとしても、安洋訴訟の和解の趣旨は、原審である東京地方裁判所の認定した損害額の元本一二億円をそのまま認め、遅延損害金の支払いにつき請求を放棄するとしたものであると主張する。

(三) 和解金の弁済充当の方法

第三  争点に対する判断

一  争点1(安全配慮義務違反の有無)について

1  甲一号証、二号証の一、二、五、三号証の二、六、七、六号証の二、八号証の二、三、九号証の二、一〇号証の二、一一号証の二、一五号証、乙九号証、一〇号証の一、二、一一ないし一六号証及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。

(一) わが国の漁船においては慣習的に漁ろう長制度が古くから採られ、漁ろう技術に熟達した者を漁ろう長として乗船させ、同人に操業全般を指揮監督させて漁獲能率の増進を図ってきたが、その職務分掌は必ずしも明確でなく、一般には「船頭」の呼称をもって船舶所有者が船頭に全乗組員を統率させて船内業務全般についての全責任を負わせているのが実情である。

(二) 被告は、漁船の操業に関する指導監督及び援助をするほか、漁ろう長に協和丸の乗組員を集めさせ、その指導、船内の職制及び服務等、漁ろうに関する実質的業務のほとんどを任せており、漁ろう長制度を採っていた。

(三) そして、被告は、職務分掌の定めもせずに、非常部署配置並びに操練の実施についても事実上乗組員らに任せたまま放置しており、実際には、事故などの非常事態が起こった際に、誰が何をするか、指示は誰が行うか等の対策は何もなかった。

もっとも、船員災害防止協会は、昭和五八年八月一〇日、福島県いわき市小名浜において、船員災害防止安全講習会を開き、漁船乗組員を対象に、講習と実技訓練(救命筏の海中投下及び作業用救命衣の試着)等を行い、小名浜救難所は、本件事故前の昭和五七年から同五九年まで、いずれも一月三日に、緊急時に備え、信号紅炎筒の使用方法や救命筏の展張方法等について、公開訓練を行い、被告は、これらに協力していたが、協和丸は、毎年一二月末に石巻港を出港し、一月から四月上旬をベーリング海で操業し、四月末ころに石巻港に一旦帰港するが、五月初めころにはアラスカ湾に向かい、同所で一一月中旬まで底引網漁業に従事し、一二月初めに石巻港に帰港し入渠工事を実施し、一二月末に再びベーリング海に向かうという操業方式を採っていたため、前記訓練のいずれも、協和丸の乗組員は参加できなかった。

2  以上の認定事実及び前記争いのない事実に基づいて判断する。

(一)  雇用契約を締結した使用者は、被用者に対して、報酬支払の義務を負うほか、業務の遂行に当たって生じる危険から被用者の生命及び健康等を保護すべき安全配慮義務を負うものである。この義務は、雇用契約に付随する当事者間の信義則上の義務として認められるものであり、労働安全衛生法等の法令に根拠を有する場合に限定されず、その具体的内容は、その職務、地位、当該労働環境等の具体的状況によって異なるものであると解される。

本件事故が発生した冬季のベーリング海は、雨や雪により海上の視程が著しく狭まり、強風が連吹するという自然の脅威にさらされているうえ、漁船が集中し、輻輳する操業船間の衝突の恐れが高い漁場であることは、集団で操業する方式を指導し、監督していた被告にとっては周知の事実であり、また、冬季のべーリング海の気温は氷点以下で、海水温度は摂氏二度ないし三度程度となることもまた周知の事実であって、衝突により船が沈没し、乗組員が海中に落下すると直ちに寒冷死する危険があることを被告は十分予測しえたものである。

したがって、被告は、底引網漁業のため被用者を漁船で従事させるためには、乗組員の業務の遂行が安全になされるように、構造上の欠陥のない船舶を航行の用に供し、その整備を十全にして船舶本体から生ずる恐れのある危険を防止し、資格、経験を有する船長など操船にあたりその任に適する技能を有する者を選任して各部署に適切に配置し、船舶の運行から生ずる危険を防止する義務を負うほか、さらに、冬季ベーリング海という陸上から孤立した危険な労働環境である船舶内で船員を就労させるのであるから、予測される事故発生時に対処し得るよう非常時における部署配置を定め、救命筏の構造や取扱方法について、具体的資料を用意して周知徹底を図るとともに、筏の投下実技訓練を行い、また、筏の取扱担当者を決めてその都度講習を行わせるなど、平素から指導訓練を行い、その所有する船舶の乗組員の生命及び健康を保護するよう配慮すべき信義則上の義務があるものというべきである。

ところが、被告は、協和丸の非常部署配置、非常事態対処の具体的方法、手段を定めず、非常事態を想定した訓練も行わずに、これら一切を事実上、乗組員らに任せたまま放置していた。また、被告は、小名浜で行われた膨張式救命筏の実技訓練に協力していたものの、右実技訓練の実施時期は協和丸の操業時期と重なるため、協和丸の乗組員らはこの訓練を受けることができなかった。

また、本件事故の衝突箇所は、協和丸の三番魚倉で、前後には二箇所の隔壁が設けてあり、水密戸を遮蔽して、浸水を速やかに防止すれば、同船の沈没は、免れたかもしれず、また、救助された乗組員は、いずれも安洋丸と協和丸が接近した際に安洋丸のフェンダーに移乗したり、安洋丸から投げられた細索にすがって助け上げられたことからすると、本件衝突後速やかに安洋丸が協和丸に接舷できていれば、より多くの協和丸乗組員が救助されたであろうことが推認できるところ、安洋丸の接舷が困難になったのは、協和丸において、船体傾斜が浸水によるものであることに気付きながら、浸水状況を確かめず、増速して右旋回を試み、その間防水措置を講じなかったため、機関室に浸水し、舵を取り戻すことも機関を停止することもできないまま右回頭を続けて船体傾斜が大きくなったからであり、また、協和丸において、衝突後、両舷の膨張式救命筏を行脚のあるまま投下せざるを得なかったのも、機関室への浸水を放置して操縦不能となり停止措置が取れなかったことに起因する。

したがって、被告が協和丸内の非常配置を定め、非常事態を想定した訓練を十分に行っていれば、乗組員か各自各様の行為をとることなく、船長の適切な指揮を受けて、各自が非常部署配置について防水措置を速やかに行い、乗組員が救助された蓋然性は高いものというべきである。そして、非常配置措置及び非常事態訓練を被告が怠っていたことは前記認定のとおりであるから、この点、被告に安全配慮義務違反があることは明白であり、そうである以上、筏の型式や救命筏の扱いが実際どのようなものであったとしても、被告は、冬季ベーリング海で被用者である乗組員を操業させるに当たり必要な使用者としての安全配慮を欠如していたものといわなければならない。

(二)  さらに、非常配置表の作成等を行うのは船主より船長の方が適任であるとしても、協和丸は、五〇〇トン未満の漁船であることは弁論の全趣旨により明らかであるところ、本件事故当時、船員法一四条の三第一、二項の義務は五〇〇トン以上のものに適用されるにすぎなかったのであるから、被告において協和丸の船長に指導して非常配置表の作成を行わせてこれを掲示させ、船内操練の実施を定期的に行うよう指導することは容易なことであり、これを被告は怠り、具体的な指示もせずに単に放置していた以上、前示の安全配慮義務違反の責任は免れないというべきである。

(三) よって、争点1の(一)(2)については判断するまでもなく、被告は、死亡した乗組員らに対し、安全配慮義務違反の責任を負うことは明らかである。

二  争点2(被告の不法行為責任)について

1  商法六九〇条の船舶所有者の賠償責任は、船舶所有者の過失を問わない点で民法七一五条の特則であるが、短期の消滅時効の適用を受けるものと解される。

2  甲一五号証及び弁論の全趣旨によれば、原告らは、遅くとも高等海難審判庁昭和六〇年第二審第二四号の裁決が言い渡された昭和六二年五月二六日には、本件事故及び加害者を知ったものであると認められるから、その翌日である昭和六二年五月二七日を起算日とし、平成二年五月二六日の経過により時効期間が満了しており、被告が、平成五年八月二五日の本件口頭弁論期日において、右時効を援用する旨の意思表示をしたことは、本件記録上明らかであるから、被告の争点2(一)(1)の責任は、時効により消滅し、争点2(一)(2)の責任については、不法行為責任を問えるとしても、やはり、時効により消滅したというべきである。

三  争点3(損害賠償額)について

1  逸失利益

協和丸の死亡乗組員らの本件事故直前の三年間における平均年収は、別表一①欄記載のとおりであること及び職長以上の職にある海員組合員の定年が五五歳と定められていることは、弁論の全趣旨により認められる。

したがって、右死亡乗組員らは、本件事故に遇わなければ、五五歳まで漁船乗組員として稼働可能であり、右稼働期間中、別表一③欄記載の金額を下回らない年収を得ることができ、その後六七歳に達するまでの間、少なくとも平成元年賃金センサス第一巻第一表による産業計・企業規模計・学歴計男子労働者の各年齢に対応する平均賃金額を下回らない年収をそれぞれの年齢時において得ることができたと推認される。

もっとも、被告は、右殉職者らの給与は、本給及び手当(固定給)と生産奨励金等(歩合給)とに分けられるところ、漁業規制による減船及び漁獲高の減少から歩合給が減少し、北転船乗組員の給与は、事故前一、二年に比べ現在約三分の一に減少していること、また、沖合遠洋漁業は厳しい自然環境下で過酷な労働を行うものであるから、漁ろう長などの幹部を除き、四六、七歳までに乗船をやめるのが一般であることを主張して、事故前の三年間の平均年収を基礎とし、これが五五歳まで続くことを前提として得べかりし年収を算定することはできないと主張する。

しかし、漁船乗組員の需要は日本国内に限られず、他国船の乗組員として乗船すれば(弁論の全趣旨によれば、協和丸の生存乗組員は、その後、アメリカの漁船で従業していることが認められる。)、その給与について漁業規制の影響を受けることはないし、また、本件事故時においても幹部ではない阿部隆三、八木清一の二名は四七歳以上であったことを考慮すると、沖合遠洋漁業に従事する乗組員が四六、七歳までに乗船をやめるのが一般であると認めることはできないから、被告の右主張は採用できない。

そこで、右に基づいて算定した年収額から、生活費として、五六歳に達するまでの期間につき、本件事故当時独身であった須藤嘉次及び阿部辰夫については、収入の三割、その他の死亡乗組員については収入の二割五分を、また五六歳から六七歳に達するまでの期間につき、須藤嘉次及び阿部辰夫については収入の五割、その他の死亡乗組員については収入の三割をそれぞれ前記認定の年収の額から控除するのが相当である。

そして、右生活費を控除した金額を基礎としてライプニッツ方式により中間利息を控除すると、別表一⑬欄記載の金額となる。

2  慰謝料

本件記録によれば、本件事故は一家の支柱ないし重要な働き手であった乗組員らにおいて、不慮の事故により極寒のベーリング海で寒冷死したもので、殉職者らの無念さは筆舌に尽くしがたいものがあることは容易に推認されるが、一方、既に、船員保険による遺族年金が支給され、さらに、原告らが、安洋水産株式会社及び前記保険組合から総額一二億一〇〇〇万円の和解金、被告、安洋水産株式会社から後記の給付金、見舞金を受領したこと等本件に表れた一切の事情を考慮すると、慰謝料として、殉職者一名につき、三〇〇万円を認めるのが相当であり、原告らはその相続分に応じて、右金員を相続したと認められる。

3  葬儀費用については、被告と雇用契約などの法律関係にない遺族である原告らが固有に支出した費用であるから、安全配慮義務違反に基づく損害としては認められない。

4  原告らが既に受領した船員保険金(別表二。ただし、平成二年一〇月分までは支給実額、同年一二月、平成三年二、四、六、八、一〇月分は平成二年一〇月分と同額と推定して算出する。)のうち、遺族年金、遺族一時金、行方不明手当金の受領額を本件損害賠償額から控除すべきであり、原告らに対する損害賠償額を算定するについては、右船員保険金を現に受領している受給権者の損害賠償額から控除するのが相当である。

5  被告が、労働契約に基づいて原告らに支払った死亡給付金(須藤嘉次及び阿部辰夫の一遺族につき各二〇〇〇万円、その余の一遺族につき各二五〇〇万円)と、自己負担において支払った一時金(一遺族一〇〇万円)並びに死亡乗組員阿部辰夫及び須藤嘉次の遺族に支払った各三五〇万円の死亡給付金の上乗せ分は、いずれも原告らに対する損害賠償額を算定するについては、右各金員を原告らが相続割合に応じて受領したものとして各原告の損害賠償額から控除するのが相当である。

6  安洋水産株式会社から支払われた見舞金(一遺族七五〇万円)も、原告らが相続割合に応じて受領したものとして各原告の損害賠償額から控除するのが相当である。

四  争点4(安洋訴訟の和解金)について

1  争点4の(一)について

乙二号証の一、二によれば、保険組合との和解では、請求が減縮されているが、同和解条項一項では、安洋水産株式会社が同事件原告らに対し、損害賠償債務として金二億二〇〇〇万円以上存することを確認していること、安洋水産との和解では、請求が原判決の趣旨どおりとなっていて減縮されていないし、債務額の確認条項もないこと、安洋水産との和解条項の二項で和解金九億九〇〇〇万円を別紙請求目録の請求額に対して配分すると定められており、同請求目録の②請求額の合計額は一二億八六五九万〇二八二円であることが認められるから、安洋訴訟の和解では、安洋水産株式会社らと同訴訟の原告らとの間で本件事故による損害金を総額一二億一〇〇〇万円とする旨の合意が成立したと認めることはできない。

また、民事訴訟法七〇条の定める裁判の参加人に対する効力は、判決の確定後において補助参加人から被参加人に対してその裁判が不当であると主張することを禁ずる効力であって、補助参加人と被参加人の相手方はこれに拘束されるものではない。

2  争点4の(二)について

乙二号証の一及び弁論の全趣旨によれば、保険組合との和解では、同和解条項の一ないし五項において、保険組合と安洋訴訟の原告らとの間で、保険組合が同原告らに対し、安洋水産株式会社の同原告らに対する損害賠償債務が金二億二〇〇〇万円以上存することを確認したうえ、第三者弁済として、安洋水産株式会社の損害賠償債務のうち金二億二〇〇〇万円を支払い、右金員の配分については、別途同原告らの定めるところによることとし、配分された金員の充当については、法定充当によるとの合意がなされていること、原告らは、平成四年三月三〇日に右保険組合から受領した金二億二〇〇〇万円を安洋水産との和解調書の別紙請求目録③記載の請求額を基礎として、これに対する遅延損害金を算定し、すべてこれに充当したうえ、本訴を提起したことが認められる。

一方、乙二号証の二及び弁論の全趣旨によれば、安洋水産株式会社が、和解金として安洋訴訟の原告らに金九億九〇〇〇万円を支払い、その配分については、別紙請求目録の請求額に対して同原告らが別途定めるところにより配分するとの合意がなされており、同原告らの安洋水産株式会社に対するその余の請求は放棄されていること、安洋水産との和解の和解調書の別紙請求目録の記載は、②欄の請求額が、本件訴状添付の計算書の⑫欄の「請求額」(同計算書の損害元本金と弁護士費用(損害元本金の一割の額)を合計したもの)と一致するが、同和解調書の別紙請求目録の③欄の「弁護士費用を除く請求額」と④欄の「原判決が認容した弁護士費用」の合計額とは一致せず、しかも、④欄は、死亡乗組員の妻又は父母であった各相続人の金額が、原判決が現実に認容した弁護士費用額と一致しないし、同目録には遅延損害金に関する記載は何もなく、同和解調書には、遅延損害金への充当を予定した条項もないうえ、右和解調書の別紙請求目録記載の③欄は、本件訴訟の訴状添付の計算書の⑩欄の弁護士費用を除く損害賠償金額の合計額と一致していることが認められる。

右認定事実によれば、安洋水産との和解で原告らに支払われた和解金九億九〇〇〇万円は、安洋訴訟の原告らの損害賠償金及び安洋訴訟で要した弁護士費用のみに配分し、同原告らが、安洋水産株式会社に対して有する損害賠償金(弁護士費用を含む。)に対する遅延損害金に配分することは、そもそも予定されていないものというべきである。

3  争点4の(三)について

(一) 和解の当事者は、和解調書に記載された和解金の配分方法、弁済充当方法の合意に拘束されるものと解されるところ、前記四の2のとおり、保険組合との和解に基づき平成四年三月三〇日に支払われた和解金二億二〇〇〇万円は、安洋水産株式会社の原告らに対する損害賠償金について既に発生している遅延損害金に充当し、安洋水産との和解に基づき平成四年七月七日に支払われた和解金九億九〇〇〇万円は、安洋訴訟の損害賠償金(遅延損害金は除く。)に充当するのが相当である。

(二) 乙二号証の二によれば、安洋訴訟で支払われた和解金の配分については、安洋水産との和解の二項で、「別紙請求目録の請求額に対して配分することについては、第一審原告らにおいて別途定めることに同意する」とあることが認められるところ、本件訴訟の訴状添付の充当計算書によると、原告らは、八木稔の遺族である八木由美子、光、慎太郎に対しては、損害額の全額を弁済充当し得るように右和解金を配分し、その余の遺族に対しては、各損害賠償債権額に按分比例して和解金を配分し、配分された和解金については、まず遅延損害金に充当している。

しかしながら、前記のとおり、安洋水産との和解で支払われた和解金を、遅延損害金に対して配分することは、同和解条項で合意した和解金の配分方法(別紙請求目録の請求額に対して配分する。)では予定されていないことから、原告らが、右配分金を遅延損害金に充当した部分は、合意に反する無効なものであって、右配分金は、安洋水産株式会社に対する損害賠償金(原告の充当計算書でいえば、損害元本額に当たる。)又は安洋訴訟で要した弁護士費用に充当するのが相当である。また、八木稔の遺族に対し、優先的に和解金を配分した点は、配分方法については原告らの別途定めるところに従う旨の合意があるので、これを認めるべきであるが、右配分額のうち、安洋水産との和解で支払われた和解金の配分金で遅延損害金に充当した部分は、安洋水産との和解での合意に基づく配分に反するものであって、認められない。

そこで、安洋訴訟の和解で支払われた和解金については、その配分金額は、本件訴訟の訴状添付の充当計算書⑤欄の配分に従い(安洋水産との和解に基づく和解金で八木稔の遣族に対する遅延損害金充当部分へ配分されたものは、本来ならば、本件原告らに再配分すべきところであるが、本件訴訟では八木稔の遺族は、原告となっていないため、これは考慮しない。)、原告らが配分した配分金の充当方法については、原告ら主張の充当方法を採用することは、遅延損害金に充当する点において不当であるから、これによらず、原告らに配分方法の決定権があることを考慮して、原告らに有利と認められる方法、すなわち、各原告に配分された額から、安洋水産との和解調書の別紙請求目録の④欄記載の弁護士費用にまず充当し、残金の金額を本件損害元本額に充当するのが相当である。

第四  結論

一  以上によると、原告らの本訴請求のうち、被告の不法行為に基づく損害賠償請求は理由がなく、被告の安全配慮義務違反に基づく損害賠償を求める原告阿部千鶴子、同日野のぶ子、同阿部保子、同阿部まり子、同阿部光子につき弁護士費用を除く請求額、原告阿部ひさ子、同須藤善明、同須藤邦子、同阿部誠一、同阿部八重子、同織笠育子につき、別表三⑬欄記載の金額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、右原告らを除くその余の原告らの請求は理由がない。

二  本訴は、安全配慮義務違反に基づく損害賠償の請求であるから、弁護士費用については、これを認めることができず、遅延損害金については、債務不履行に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり、債務者は債権者からの履行の請求を受けた時に初めて遅滞に陥るものというべきであることから、本件記録上明らかな被告に対する本件訴状送達日の翌日である平成四年一一月五日から発生する。

三  よって、原告阿部ひさ子、同阿部千鶴子、同日野のぶ子、同阿部保子、同阿部まり子、同須藤善明、同須藤邦子、同阿部誠一、同阿部八重子、同阿部光子、同織笠育子については、別表三⑬欄記載の金額及びこれに対する平成四年一一月五日から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度においていずれも理由があるからこれを認容し、その余の原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条一項を、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用し、仮執行免脱宣言は、相当でないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官川波利明 裁判官阿部和桂子 裁判官片桐春一は、転補のため署名、捺印することができない。裁判長裁判官川波利明)

別表一

55歳定年

単位:円

遭難船員名

職名

生年月日

(事故当時年齢)

①事故前3年間の平均年収

②55歳に達するまでのライプニッツ係数

③55歳に達するまでの年収原価

④55~59歳

⑤60~64歳

⑥65・66歳における年収

⑦55~59歳

⑧60~64歳

⑨65・66歳のライプニッツ係数

⑩55~59歳

⑪60~64歳

⑫65・66歳の年収現価

⑬逸失利益の合計

(③+⑩

+⑪+⑫)

八木稔

(船長)

昭和29年4月30日生

(29歳)

16579181

14.3751

178745538

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  1.2177

⑧  0.954

⑨  0.321

⑩ 4345569

⑪ 2504517

⑫ 737016

186332640

木村富士夫

(1等機関士)

昭和9年10月26日生

(49歳)

14220796

5.0756

54134304

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  3.2308

⑧  2.5313

⑨  0.8518

⑩ 11529659

⑪ 6645371

⑫ 1955732

74265066

阿部久雄

(2等機関士)

昭和25年10月15日生

(33歳)

12510129

13.163

123503121

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  1.48

⑧  1.1596

⑨  0.3903

⑩ 5281631

⑪ 3044274

⑫ 896128

132725154

阿部吉雄

(甲板長)

昭和14年12月17日生

(44歳)

13466135

8.3064

83891327

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  2.5313

⑧  1.9834

⑨  0.6674

⑩ 9033374

⑪ 5206980

⑫ 1532350

99664031

日野正

(冷凍長)

昭和21年11月10日生

(37歳)

13068995

11.6895

114577512

④ 5098100

⑤3750400

⑥ 3280000

⑦  1.799

⑧  1.4096

⑨  0.4743

⑩6420037

⑪ 3700594

⑫ 1088992

125787135

阿部隆三

(司厨長)

昭和10年3月20日生

(48歳)

11618475

5.7863

50420986

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  3.0769

⑧  2.4108

⑨  0.8113

⑩ 10980440

⑪ 6329025

⑫ 1862744

69593195

阿部明義

(甲板員)

昭和27年9月29日生

(31歳)

11778393

13.7986

121894000

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  1.3424

⑧  1.0519

⑨  0.3539

⑩ 4790582

⑪ 2761532

⑫ 812554

130258668

八木清一

(甲板員)

昭和11年11月22日生

(47歳)

10634110

6.4632

51547784

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  2.9303

⑧  2.296

⑨  0.7727

⑩ 10457273

⑪ 6027642

⑫ 1774119

69806818

津田利郎

(甲板員)

昭和14年9月15日生

(44歳)

9569175

8.3064

59614046

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  2.5313

⑧  1.9834

⑨  0.6674

⑩ 9033374

⑪ 5206980

⑫ 1532350

75386750

阿部順

(甲板員)

昭和23年5月25日生

(35歳)

11808712

12.4622

110371898

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  1.6317

⑧  1.2785

⑨  0.4302

⑩ 5822998

⑪ 3356420

⑫ 987739

120539055

石森正徳

(機関員)

昭和17年1月18日生

(42歳〉

9469653

9.3935

66714889

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  2.296

⑧  1.799

⑨  0.6054

⑩ 8193666

⑪ 4722878

⑫ 1389998

81021431

須藤嘉次

(機関長)

昭和34年5月27日生

(24歳)

10357473

15.5928

113051403

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  0.954

⑧  0.7475

⑨  0.2516

⑩ 2431793

⑪ 1401712

⑫ 412624

117297532

阿部辰夫

(甲板員)

昭和32年12月23日生

(26歳)

9469653

15.141

100366011

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  1.0519

⑧  0.8241

⑨  0.2773

⑩ 2681345

⑪ 1545352

⑫ 454772

105047480

阿部幸三

(甲板員)

昭和21年2月11日生

(38歳)

9469653

11.274

80070650

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  1.889

⑧  1.48

⑨  0.498

⑩ 6741217

⑪ 3885414

⑫ 1143408

91840689

阿部政一

(機関員)

昭和31年10月18日生

(27歳)

9469653

14.8981

105809878

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  1.1044

⑧  0.8653

⑨  0.2912

⑩ 3941239

⑪ 2271654

⑫ 668595

112691366

織笠善朗

(機関員)

昭和25年9月30日生

(33歳)

9469653

13.163

93486781

④ 5098100

⑤ 3750400

⑥ 3280000

⑦  1.48

⑧  1.1596

⑨  0.3903

⑩ 5281631

⑪ 3044274

⑫ 896128

102708814

別表二

59年時点の評価

単位:円

遺族年金等受給者

支給金

昭和

59年

支給金

昭和

60年

支給金

昭和

61年

支給金

昭和

62年

支給金

昭和

63年

支給金

平成

元年

支給金

平成

2年

支給金

平成

3年

現価

昭和

59年

現価

昭和

60年

現価

昭和

61年

現価

昭和

62年

現価

昭和

63年

現価

平成

元年

現価

平成

2年

現価

平成

3年

現価の

合計

八木由美子

2,389,207

3,974,891

4,196,041

4,488,260

4,490,972

4,567,248

5,252,675

4,035,330

2,389,207

3,785,288

3,805,809

3,876,958

3,694,722

3,578,438

3,919,546

2,867,505

27,917,473

木村淑子

2,147,749

3,235,172

3,304,073

3,453,975

3,456,008

3,515,100

4,055,819

3,112,495

2,147,749

3,080,854

2,996,794

2,983,543

2,843,257

2,754,080

3,026,452

2,211,738

22,044,467

阿部ひさ子

1,964,990

2,954,947

3,011,806

3,154,882

3,155,974

3,214,900

3,704,305

2,845,580

1,964,990

2,813,996

2,731,708

2,725,187

2,596,419

2,518,874

2,764,152

2,022,069

20,137,395

阿部千鶴子

2,951,299

4,206,698

4,357,666

4,555,576

4,066,373

4,135,148

4,069,332

3,025,330

2,951,299

4,006,038

3,952,403

3,935,106

3,345,405

3,239,888

3,036,535

2,149,799

26,615,473

日野のぶ子

2,354,141

3,539,508

3,681,208

3,902,544

3,904,556

3,973,248

4,573,034

3,512,955

2,354,141

3,370,673

3,338,855

3,371,017

3,212,278

3,113,039

3,412,398

2,496,306

24,668,707

阿部久子

2,513,866

3,672,573

3,819,899

3,749,364

3,338,549

3,489,757

4,097,405

3,145,830

2,513,866

3,497,391

3,464,648

3,238,700

2,746,624

2,734,224

3,057,484

2,235,427

23,488,364

阿部保子

2,641,283

3,970,031

4,192,624

4,485,902

4,488,572

4,564,848

5,249,675

4,033,080

2,641,283

3,780,660

3,802,709

3,874,922

3,692,748

3,576,558

3,917,307

2,865,907

28,152,094

八木ケンコ

2,491,475

3,750,090

3,361,747

3,419,958

3,421,849

3,480,900

4,015,906

3,082,165

2,491,475

3,571,210

3,049,104

2,954,159

2,815,155

2,727,285

2,996,669

2,190,196

22,795,243

津田洋子

3,176,757

4,234,523

4,387,207

4,684,602

4,490,921

4,165,848

4,798,585

3,684,205

3,176,757

4,032,536

3,979,196

4,045,559

3,694,680

3,263,941

3,580,704

2,617,996

28,392,369

阿部まり子

2,639,691

3,967,631

4,189,524

4,482,302

4,484,972

4,561,273

5,245,384

4,029,830

2,639,691

3,778,375

3,799,898

3,871,812

3,690,786

3,573,757

3,914,105

2,863,597

29,131,021

石森節子

2,643,674

3,973,691

4,195,683

4,488,560

4,245,005

3,969,048

4,441,842

3,193,430

2,643,674

3,784,145

3,805,484

3,877,218

3,492,365

3,109,749

3,314,502

2,269,251

26,296,388

須藤善明

7,920,000

7,920,000

7,920,000

須藤邦子

7,920,000

7,920,000

7,920,000

阿部誠一

7,920,000

7,920,000

7,920,000

阿部八重子

7,920,000

7,920,000

7,920,000

阿部ひで子

2,959,341

3,940,348

4,162,874

4,456,285

4,458,872

4,535,148

5,214,864

4,006,660

2,959,341

3,752,393

3,775,726

3,849,338

3,668,313

3,553,288

3,891,331

2,847,132

28,296,862

阿部光子

2,326,741

3,497,491

3,638,141

3,858,969

3,860,856

3,683,764

3,701,376

2,842,415

2,326,741

3,330,660

3,299,793

3,333,377

3,176,326

2,886,229

2,761,957

2,019,820

23,134,913

織笠育子

2,805,249

4,214,547

4,462,865

4,786,602

4,789,272

4,871,973

5,600,375

4,303,580

2,805,249

4,013,513

4,047,818

4,134,666

3,940,134

3,817,190

4,179,000

3,058,124

29,995,694

別表三

単位:円

死亡船員名

逸失利益

別表―⑬

原告たる相続人の氏名・続柄・法定相続分

相続額

①×②

慰謝料

(相続分)

船員保険による別表二の支給金

小名浜漁協からの

給付金

安洋水産見舞金

(損害元本額)

③+④

-⑤-⑥-⑦

安洋水産との和解の和解金配分額(原告の充当計算書⑤欄)

安洋訴訟の弁護士費用(和解調書の

請求目録④欄)

(損害元本充当分)

⑨-⑩

安洋訴訟の和解金充当

⑧-⑪

認容額

木村富士夫

74,265,066

木村淑子 妻 1/2

37,132,533

1,500,000

22,044,467

13,000,000

3,750,000

-161,934

4,529,697

575,000

3,954,697

-4,116,631

0

雅樹 子 1/2

37,132,533

1,500,000

13,000,000

3,750,000

21,882,533

34,569,494

2,075,842

32,493,652

-10,611,119

0

阿部久雄

132,725,154

阿部辰美 父 1/6

22,120,859

500,000

4,333,333

1,250,000

17,037,526

19,198,715

1,694,241

17,504,474

-466,948

0

やえ子 母 1/6

22,120,859

500,000

4,333,333

1,250,000

17,037,526

19,198,715

1,694,241

17,504,474

-466,948

0

ひさ子 妻2/3

88,483,436

2,000,000

20,137,395

17,333,333

5,000,000

48,012,708

40,543,580

5,146,604

35,396,976

12,615,732

12,615,732

阿部 吉雄

99,664,031

阿部千鶴子 妻 1/2

49,832,015

1,500,000

26,616,473

13,000,000

3,750,000

7,965,542

4,529,697

575,000

3,954,697

4,010,845

2,597,366

洋一 子 1/6

16,610,671

500,000

4,333,333

1,250,000

11,527,338

14,857,936

1,037,814

13,820,122

-2,292,784

0

紀彦 子 1/6

16,610,671

500,000

4,333,333

1,250,000

11,527,338

14,857,936

1,037,814

13,820,122

-2,292,784

0

友紀 子 1/6

16,610,671

500,000

4,333,333

1,250,000

11,527,338

14,857,936

1,037,814

13,820,122

-2,292,784

0

日野正

125,787,135

日野のぶ子 妻 1/2

62,893,567

1,500,000

24,668,707

13,000,000

3,750,000

22,974,860

15,042,424

1,909,486

13,132,938

9,841,922

9,511,027

博貴 子 1/2

62,893,567

1,500,000

13,000,000

3,750,000

47,643,567

54,863,352

4,537,950

50,325,402

-2,681,835

0

阿部隆三

69,593,195

阿部久子 妻 1/2

34,796,597

1,500,000

23,488,364

13,000,000

3,750,000

-3,941,767

4,529,697

575,000

3,954,697

-7,896,464

0

洋子 子 1/4

17,398,298

750,000

6,500,000

1,875,000

9,773,298

16,364,652

885,743

15,478,909

-5,705,611

0

龍一 子 1/4

17,398,298

750,000

6,500,000

1,875,000

9,773,298

16,364,652

885,743

15,478,909

-5,705,611

0

阿部明義

130,258,668

阿部保子 妻 1/2

65,129,334

1,500,000

28,152,094

13,000,000

3,750,000

21,727,240

14,059,582

1,784,724

12,274,858

9,452,382

8,889,596

享 子 1/4

32,564,667

750,000

6,500,000

1,875,000

24,939,667

28,312,315

2,304,859

26,007,456

-1,067,789

0

浩幸 子 1/4

32,564,667

750,000

6,500,000

1,875,000

24,939,667

28,312,315

2,304,859

26,007,456

-1,067,789

0

八木清一

69,806,818

八木ケンコ 妻 1/2

34,903,409

1,500,000

22,795,243

13,000,000

3,750,000

-3,141,834

4,529,697

575,000

3,954,697

-7,096,531

0

玲子 子 1/6

11,634,469

500,000

4,333,333

1,250,000

6,551,136

10,937,815

604,695

10,333,120

-3,781,984

0

順子 子 1/6

11,634,469

500,000

4,333,333

1,250,000

6,551,136

10,937,815

604,695

10,333,120

-3,781,984

0

郁子 子 1/6

11,634,469

500,000

4,333,333

1,250,000

6,551,136

10,937,815

604,695

10,333,120

-3,781,984

0

津田利郎

75,386,750

津田洋子 妻 1/2

37,693,375

1,500,000

28,392,369

13,000,000

3,750,000

-5,948,994

4,529,697

575,000

3,954,697

-9,903,691

0

弘子 子 1/6

12,564,458

500,000

4,333,333

1,250,000

7,481,125

11,670,436

613,036

11,057,400

-3,576,275

0

利哉 子 1/6

12,564,458

500,000

4,333,333

1,250,000

7,481,125

11,670,436

613,036

11,057,400

-3,576,275

0

武彦 子 1/6

12,564,458

500,000

4,333,333

1,250,000

7,481,125

11,670,436

613,036

11,057,400

-3,576,275

0

阿部順

120,539,055

阿部まり子 妻 1/2

60,269,527

1,500,000

28,131,021

13,000,000

3,750,000

16,888,506

10,247,755

1,300,850

8,946,905

7,946,601

6,479,454

和恵 子 1/4

30,134,763

750,000

6,500,000

1,875,000

22,509,763

26,398,101

2,062,326

24,335,775

-1,826,012

0

和幸 子 1/4

30,134,763

750,000

6,500,000

1,875,000

22,509,763

26,398,101

2,062,326

24,335,775

-1,826,012

0

石森正徳

81,021,431

石森節子 妻 1/2

40,510,715

1,500,000

26,296,388

13,000,000

3,750,000

-1,035,673

4,529,697

575,000

3,954,697

-4,990,370

0

慎一 子 1/4

20,255,357

750,000

6,500,000

1,875,000

12,630,357

18,615,367

1,102,272

17,513,095

-4,882,738

0

真紀 子 1/4

20,255,357

750,000

6,500,000

1,875,000

12,630,357

18,615,367

1,102,272

17,513,095

-4,882,738

0

須藤嘉次

117,297,532

須藤善明 父 1/2

58,648,766

1,500,000

7,920,000

12,250,000

3,750,000

36,228,766

35,677,287

4,528,876

31,148,411

5,080,355

5,080,355

邦子 母 1/2

58,648,766

1,500,000

7,920,000

12,250,000

3,750,000

36,228,766

35,677,287

4,522,876

31,154,411

5,074,355

5,074,355

阿部辰夫

105,047,480

阿部誠一 父 1/2

52,523,740

1,500,000

7,920,000

12,250,000

3,750,000

30,103,740

30,852,154

3,916,374

26,935,780

3,167,960

3,167,960

八重子 母 1/2

52,523,740

1,500,000

7,920,000

12,250,000

3,750,000

30,103,740

30,852,154

3,910,374

26,941,780

3,161,960

3,161,960

阿部幸三

91,840,689

阿部ひで子 妻 1/2

45,920,344

1,500,000

28,296,862

13,000,000

3,750,000

2,373,482

4,529,697

575,000

3,954,697

-1,581,215

0

公悦 子 1/4

22,960,172

750,000

6,500,000

1,875,000

15,335,172

23,700,299

1,340,222

22,360,077

-7,024,905

0

文香 子 1/4

22,960,172

750,000

6,500,000

1,875,000

15,335,172

23,700,299

1,340,222

22,360,077

-7,024,905

0

阿部政一

112,691,366

阿部光子 妻 1/2

56,345,683

1,500,000

23,134,913

13,000,000

3,750,000

17,960,770

11,092,457

1,408,077

9,684,380

8,276,390

7,013,542

津田みゆき 子 1/2

56,345,683

1,500,000

13,000,000

3,750,000

41,095,683

49,705,103

3,931,23

45,774,080

-4,678,397

0

織笠善朗

102,708,814

織笠育子 妻 1/2

51,354,407

1,500,000

29,995,694

13,000,000

3,750,000

6,108,713

4,529,697

575,000

3,954,697

2,154,016

2,154,016

友美 子 1/6

17,118,135

500,000

4,333,333

1,250,000

12,034,802

15,257,702

1,050,558

14,207,144

-2,172,342

0

育美 子 1/6

17,118,135

500,000

4,333,333

1,250,000

12,034,802

15,257,702

1,050,558

14,207,144

-2,172,342

0

猛 子 1/6

17,118,135

500,000

4,333,333

1,250,000

12,034,802

15,257,702

1,050,558

14,207,144

-2,172,342

0

別紙請求目録〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
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